はじめに:自己肯定感の“低さ”を責めなくていい理由
介護の仕事をしている人の多くが、「自己肯定感が低い」「自信が持てない」と感じやすい背景があります。
でも私は、40年のITエンジニアとして働く中で、
「自己肯定感の高さ・低さそのものより、“変われる素質”のほうが、人の価値に直結している」
と強く思うようになりました。
この記事は、介護という“人に寄り添う仕事”をしている人が、自分の心の構造を理解し、少しでも軽くなるヒントとして書いています。
ITエンジニアとして40年働いて見えてきた「自己肯定感の仕組み」
ITの世界は、ある意味で“公平”です。
・コードが動くか動かないか
・稼働するかしないか
・失敗すれば原因を特定できる
結果と評価がまっすぐつながりやすい。
だからこそ、
「うまくいった → 自信がつく」
「失敗した → 原因がわかる」
という循環が生まれ、自己肯定感が積み上がっていきます。
一方で、介護の現場は“揺れる要素”が圧倒的に多いのです。
評価する存在が変わると、自己肯定感も変わるという仮説
ITの世界の評価者はコンピュータ。
介護の世界の評価者は人間。
この違いは非常に本質的です。
● コンピュータの評価はブレない
・感情なし
・同じ結果なら同じ評価
・人間関係の文脈に左右されない
● 人間の評価は文脈の影響を受ける
・体調
・感情
・価値観
・過去の関係性
同じ行動でも、受け取られ方が変わる。
その“揺れ”の中で働く介護職の人は、どうしても自己肯定感が下がりやすい土壌にいます。
つまり、あなたが揺れるのは「心が弱いから」ではなく「職種の特性」なのです。
介護の現場は、自己肯定感が消耗しやすい仕事である
介護に携わる方と接して感じたことがあります。
「人のために尽くしているのに、自分の価値を感じにくい環境にいる」
ということです。
理由は複数あります。
● 自己肯定感が下がりやすい理由
・結果が数字で見えにくい
・感謝されても要求が同じ量だけ返ってくる
・正解がない
・判断基準が人によって違う
・“もっと良くできたのでは”という葛藤
・自己犠牲が評価されやすい文化
この環境で自己肯定感が揺れるのは当然です。
むしろ、揺れながらも他者に寄り添えること自体が強さだと私は思います。
人には“Aモード(成熟)”と“Bモード(防衛)”の2つの顔がある
図解診断では、人の心をひとつの状態では捉えず、
「Aモード」「Bモード」という2つのモードが共存している構造として扱います。
● Aモード(成熟)
・落ち着いている
・相手の話を受け止められる
・学びから変われる
・自分を責めすぎない
● Bモード(防衛)
・不安から反射的に反応する
・相手の言葉を「攻撃」と感じてしまう
・失敗を恐れる
・自分を守るために固くなる
自己肯定感が低いからBモードになるのではない。
環境の負荷によって、人は誰でもBモードに入ります。
相手によってモードが切り替わるという気づき
同じ人でも、相手によって全く反応が変わります。
・安心できる相手 → Aモード
・緊張する相手 → Bモード
介護の現場でもよく見られます。
「Aモードの自分だけが本物」ではなく、
「どんな条件でAモードになれるか」が大事なのです。
“変われる素質”は、誰の中にも必ずある(ワーク付き)
介護職の方は、実は“変われる素質”を非常に多く持っています。
なぜなら、日々「人に合わせて動く」ことをしているからです。
ここでは、自分の素質を見える化する簡単ワークを紹介します。
● Step1:最近の出来事をA/Bモードで書き分ける
例)
A:落ち着いて話を聴けた
B:急な呼び出しで焦ってしまった
● Step2:誰の前でどちらが出やすいか分析する
・柔らかい同僚 → A
・厳しい上司 → B
・安心感のある利用者さん → A
● Step3:Aモードへ戻れた瞬間を探す
・深呼吸で落ち着いた
・同僚のひと言で視点が変わった
・時間を置いたら冷静になれた
これがあなたの「変われる素質の地図」です。
まとめ:自己肯定感を“固定値”として見ない世界へ
介護職の方が感じる自己肯定感の揺れは、あなたの能力の問題ではありません。
・評価が揺れやすい仕事であること
・A/Bモードが自然に切り替わること
・“変われる素質”は誰にでもあること
これを理解すると、自分を少し優しく扱えるようになります。
自己肯定感は「高い・低い」ではなく、
“揺れながら戻る”もの。
揺れながらも変わっていける人こそ、介護の現場で本当の強さを発揮できるのだと思います。
